本物の日本シリーズを観たい!!
かつて日本シリーズといえば、チームの大黒柱たるエースが大車輪の活躍を果たす場であった。その究極は昭和34年(1959年)に南海ホークスが巨人を4勝0敗で下した日本シリーズで杉浦忠さんが一人で4勝0敗と投げまくって大活躍したケースであろう。
この年の杉浦さんはこの年の日本シリーズ4試合のうち、3試合に先発し、残る1試合にもリリーフで登板している。合計32イニングを投げているが、チーム全体で4試合計37イニングだったので、チームイニング数の86.5%に当たる。敗戦処理。が調べた限りではその年の日本シリーズのチームイニング数の86.5%を投げたというのは日本シリーズで最高記録。言い方を変えれば最も酷使された投手と言える。
近年の野球ではエースと言われる投手でも公式戦では中六日で登板。ローテーション投手の中の一人に過ぎないケースが大半だ。かつてエースの代名詞と言われた年間20勝を挙げる投手は滅多に出ない。エースと言われる投手はいても,優勝する様なチームでは複数のエース級の働きをする先発投手がいると言うのが実態であることが多い。そしてなおかつ、それらの投手も先発完投という訳では無く、セットアッパーや,クローザーの力を借りて勝つ。そしてその戦い方は“短期決戦”と呼ばれるクライマックスシリーズや日本シリーズにおいても変わらなくなってきた。上述の杉浦さんの様なケースが近年でなされないのは当然としても、敗戦処理。が日本のプロ野球に興味を持ち始めた1970年代にはあった、日本シリーズ第1戦に先発するエースが第4戦、第7戦と先発で投げまくるケースも皆無になった。近年では第1戦に先発したエースが中四日で第5戦に投げるとも限らず、レギュラーシーズンと同じ中六日を空けて第1戦に先発した投手が次は第6戦に投げる例も見られる。日本シリーズが公式戦、レギュラーシーズンの延長になってしまった。
クライマックスシリーズという制度が確立され、日本シリーズの存在意義が変わったという見方がある。確かにそれはあると思う。しかし、そうであるにしても、日本シリーズは特別な試合であって欲しいと少なくとも敗戦処理。は思うのだ。
上述の昭和34年(1959年)の日本シリーズでは、四連勝で制したホークスの杉浦さんは4試合全てに登板してチーム全イニングの86.5%を投げたが、四連敗に終わったジャイアンツもエースの藤田元司さんが4試合のうち3試合で先発登板。合計で22イニングを投げてチーム全イニングの62.9%のイニングを投げた。両エースがチームのために酷使に耐えたのだ。この例は極端としても、近年では短期決戦かつ頂上対決とは思えぬ淡々とした試合運びが目立つ。例えば直近十年間の日本シリーズで、同一年度に先発とリリーフ、両方を経験したのは2013年のゴールデンイーグルス、田中将大、則本昂大と2017年のベイスターズ、井納翔一の三人だけしかいない。井納は日本シリーズ第1戦に先発してKOして、以降はリリーフに回ったのでいわば“降格”だが、2013年の田中と則本は文字通りのフル回転だった。田中の第6戦完投負けの翌日第7戦のリリーフ登板は当時、物議を醸したが、かつての日本シリーズではエース格の投手のフル回転は当たり前だった。
また、同一年度に三回先発した投手となると、1992年のスワローズ、岡林洋一まで遡らなければならない。
岡林はこの年、第1戦、第4戦、第7戦に先発(第1戦と第4戦の間に雨天中止があって中四日)した。全て完投だったが,第1戦は延長12回、第7戦では延長10回を一人で投げきった。余談だが先発投手が九回を超えて延長戦まで投げることを記録上“補回試合”と呼ぶが事実上、死語になってしまっている。
今週の土曜日、21日から始まるジャイアンツとホークスによる日本シリーズは、これぞ日本シリーズというドラマをファンに提供してくれるだろうか?
エースと呼ばれるはずの投手であってもローテーション投手の一人に過ぎないのであれば、豊富な先発ローテーション投手を順番に投げさせ、第1戦に先発したエースがレギュラーシーズンと同じ中六日で第6戦に先発する。逆にエースと呼ばれる投手への依存度が強い球団であれば、エースの二回目の先発はもっと早くなる。チームとしての、特に投手陣に関して完成度が高い球団は前者になるのだろうが、日本シリーズという舞台を特別な舞台だと期待する敗戦処理。には後者が望ましい。
報道によると、ジャイアンツは第1戦に菅野智之が先発し、第2戦は今村信貴が先発するという。そして先発投手が思わぬ不調やアクシデントの際の“第二先発”として戸郷翔征と畠世周を準備させるという。菅野智之が先発、リリーフとフル回転する展開は想像しがたいが、展開次第では戸郷や畠がリリーフと先発の掛け持ちになるかもしれない。一方の工藤公康監督も現役時代にライオンズで日本シリーズに出ていた頃には先発とリリーフの掛け持ちをこなしていた張本人だ。あっと驚く投手起用をするかもしれない。そのためには昨年のようにジャイアンツがあっさりと四連敗する展開は避けなければならない。これぞ日本シリーズという戦いの末にジャイアンツが8年ぶりに日本一に輝く、そんな日本シリーズを観たいのだ。
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投稿: 敗戦処理。 | 2020年11月29日 (日) 17時04分