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2020年2月11日 (火)

野村克也さん、急逝。

 
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野村克也
さんがなくなられたとの報道が入ってきた。奥さんの沙知代さんがなくなられて急激に老けた様に感じていて心配だったが、残念ながらなくなられた。84歳だった。



報道によると、自宅の風呂場でぐったりと湯につかっているのに気付いた家政婦さんが急いで119番通報をしたものの、搬送された病院でなくなられたという。高木守道さんも直前まで元気だったというし、気候的に体調を崩すと厳しい時期とはいえ、おそろしい。コロナウイルスの脅威も深刻だが、高齢の方を身近に持つ方は万全の注意をはかっていただきたいものだ。いわゆるヒートショックなのだろうか?


何度か拙blogで言及しているが、敗戦処理。が日本のプロ野球に興味を持って初めて野球場で生観戦したのが昭和49(1974)。その時に買った選手名鑑『ファン手帳』を見ると、この年の十二球団の監督はほとんど帰らぬ人となっており、野村克也さんの急逝で、健在なのはファイターズで監督を務めていた中西太氏だけとなった。
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ボロボロになった46年前の『ファン手帳』。表紙に出ているのは前年の両リーグの優勝チーム。セ・リーグを制したジャイアンツからは三冠王になった王貞治の写真、そしてパ・リーグでは初の二シーズン制のシーズンを制した南海ホークスの野村克也監督兼選手の写真が使われていた。この年までがジャイアンツの不滅のV9、9年連続日本一だった。


当時はジャイアンツが強く、かつテレビ中継されるのがジャイアンツの試合ばかりという時代で、今ほどファンの人気が各球団に分散されてはおらず、いわば、巨人>阪神>他のセ・リーグの球団>パ・リーグという感じだった。野村さんはそんな時代に現役生活を過ごしていた。


野村さんの有名な発言に「王、長嶋がひまわりならば俺は野に咲く月見草」というものがあるが、あまりにジャイアンツ一辺倒だった故に野村選手に限らずパ・リーグの実力選手達の影が薄く感じられる時代だった。


そんな野村さんが積年の恨み辛みを返すチャンスを得たのがスワローズでの監督時代であろう。ジャイアンツ一辺倒時代の象徴の様な長嶋茂雄が監督を務めるジャイアンツを相手に、野村ID野球でスワローズが一矢を報いた時期。


率直に言って敗戦処理。は野村克也という野球人を好きにはなれない。それはスワローズ監督時代の何かとジャイアンツ、特に長嶋監督を挑発する言動のせいだと思う。そして、好きになれないという感情の一方で、野村監督の野球を恐れているという感情もあったと今にして思う。当時発足したフリーエージェントの制度などで他球団の四番打者クラスをかき集めるジャイアンツに対し、野村監督率いるスワローズは補強といえば他球団で峠を過ぎた選手が多く、小早川毅彦に代表される様に“野村再生工場”で最後の一花を咲かせたりしていた。戦力の差は圧倒だったが、スワローズにジャイアンツはよくやられた。


長嶋ジャイアンツを応援しながらも、野村ID野球を脅威に感じていたのだ。そんな感覚も入り交じり、素直に好きになれなかったのだろう。


野村さんがホークスの選手兼任監督を解任されてオリオンズ、ライオンズと選手として現役を続けた後に引退してから長らくユニフォームを着られなかったのは、まだ正式に籍を入れる前の沙知代夫人の球団への行きすぎた介入ぶりがホークスOBで球団に影響力を持つ鶴岡一人さんの逆鱗に触れたからで、なおかつ退任会見で野村さんが鶴岡さんを名指しで批判したことが尾を引いたと言われている。監督になったのがヤクルトスワローズだというのも、鶴岡さんの影響力が薄れたというのと、パ・リーグではなく、在阪球団でもないセ・リーグの東京の球団だからだと言われた。


もっとも野村さんは、ユニフォームを着られない間に評論家活動を精力的にこなし、特にテレビ朝日の解説者としてテレビ画面にストライクゾーンを9分割で表示して配球を解説する“野村スコープ”が好評だった。精神論や内輪の話が幅を利かせていたテレビ中継の野球解説に一石を投じた。そのイメージも重なって監督野村像が出来上がったのかもしれない。


余談になるが野村さんは現役を引退後、最初はTBS系列の解説者だった。あるとき、解説の仕事に備えてTBSの資料室でデータの下調べをしていたら、球場に向かう時間ギリギリになってしまい、出発を催促するスタッフに「そんなに細かく調べなくても…。たかが解説じゃないですか」と言う様なことを言われ、この局では仕事が出来ないと感じてテレビ朝日に移籍したという。最晩年はTBSテレビの週末の夜に放送される『S・1』でぼやきを披露していたのが何とも皮肉だ。


ヤクルトスワローズと阪神タイガースの監督を務め、再び解説者になった野村さんは自身が築いた野球感にこだわり、その後もジャイアンツの批判を続けた。社会人野球のシダックスの監督に就任し、そのシダックスに所属する野間口貴彦の獲得を画策したジャイアンツが、タイガースから野村さんの息子である野村克則(カツノリ)をトレードで獲得して人身御供にしたときに「本当は巨人ファンだったんだ」と謎の告白をした時には心底、意地の悪い人だと思った。


これまた余談だが、野村監督率いるシダックスと、ジャイアンツの二軍が200310月に交流試合をジャイアンツ球場で行ったのを生観戦した。野村監督がベンチに到着すると、一塁側から次々とジャイアンツの関係者が挨拶に向かった。プロとアマチュアの試合が今より珍しい時代だったから、試合前には両監督に花束の贈呈も行われ、野村監督も花束を受け取っていた。だが、野村監督はこのセレモニーが終わると、試合開始を待たずに球場を後にした。試合の監督はコーチに代行させて、自分は福岡ドームで行われるホークスとタイガースの日本シリーズを取材するために福岡に飛んだのだ。


監督を引き受ける時点での契約に、副業優先可となっていたのかもしれない。だが、既にこの時点で野球殿堂入りを果たしていたほどの野球界のVIPであるとはいえ、今は社会人野球の監督。二軍とは言え格上のプロ野球チームとの交流試合に、監督が副業を理由に球場からいなくなるとは失礼千万な話。敗戦処理。的にはアウトだった。


沙知代夫人の問題もあってタイガースの監督の座を追われ、プロ野球界から再び距離を置かざるを得なかった野村さんに救いの手を差し伸べたシダックスの志太勤会長も本意ではなかっただろう。


その沙知代夫人が2017年になくなられ、その後、野村さんも急激に元気がなくなった様に感じられた。それでも先月には弱々しく車椅子姿ながら、シダックス野球部のOB会や、ヤクルトスワローズのOB会、さらには昨年なくなられた金田正一さんのお別れの会にと精力的に姿を見せていた。肉体的には衰えが顕著でも、野球への情熱が続く限り長生きできるのだろうと思っていたが…。出来ればもっともっと、ぼやきを聞きたかった。かなりの年長者に対して失礼な表現になるが、“憎まれっ子世に憚る”を地で行って欲しかった。だが、もう…。


野村さんの野球人生の大半は“反・巨人”だったのだと思う。その集大成が、正反対を行く同学年にしてミスタージャイアンツ、ミスタープロ野球と呼ばれる長嶋茂雄が率いるジャイアンツを向こうに回しての野村ID野球だったのだろう。昨年、そのスワローズの創立50周年の行事で久しぶりのユニフォーム姿を披露できたのは野村さんにとっても、スワローズファンにとっても良かったと思う。
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上述した、敗戦処理。が日本のプロ野球に興味を持ち始めた時代には圧倒的にジャイアンツやセ・リーグが上にいたが、今ではそのジャイアンツが日本シリーズでホークスにあっさりと四連敗して、敗軍の将である原辰徳監督が、パ・リーグで導入している指名打者制の導入を主張する時代だ。交流戦と日本シリーズにおいてパ・リーグがセ・リーグを圧倒して久しい。


かつてのジャイアンツにはファンだけでなく、アンチも多くいたが、リーグ優勝が五年ぶりという球団にもはやアンチ派は少ない。今でもアンチ讀賣派はいるが、微妙に意味が違う。“反・巨人”を生きがいにしていた様にも思える野村克也さんの死は星野仙一さんの死とともに、長かったひとつの時代の終わりを示唆しているのかもしれない。


敗戦処理。がジャイアンツファンとして脅威を感じたという意味ではドラゴンズ時代の落合博満監督にも似た様な感情があるが、本当に野村さんは脅威だった。脅威と、好きになれない感情、この二つが激しく交差したのは他に思いつかない。


つつしんでご冥福をお祈りします。


最後に、野村さんが沙知代夫人がなくなられた後に急激に元気がなくなったのと同様に、野村さんと同年代でかつてしのぎを削った野球人達にもポッカリと穴が空いた様な感じになるのが怖い。上述した様にこの時期の気候は高齢者にとっては要注意だ。長嶋茂雄さんを始めとする同年代の野球人の皆さんにもくれぐれも健康には留意いただきたいものである。


【参考エントリー】
拙blog2019年7月14日付花道

 

 

 

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