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2019年12月 6日 (金)

空井孝一さんを知っていますか!?

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古本屋で見つけた本だ。気になるので買って読んでみた。セイバーメトリクスなどありやしない、今から35年前に独自の理論で最高打者の決め方を考えたのだ。「この人誰だ!?」と著者の空井孝一さんなる人物を検索してもせいぜいこの本のことに突き当たるだけで、どんな人なのかわからない。


どなたか、空井孝一さんを知っていますか!?

 

 

 



空井孝一さんが昭和59(1984)年に出した『プロ野球の最高打者はこうして決めるべきだ』(渓水社)によると、
空井孝一さんは首位打者を最高の打者だとする考え方を否定することから始まり、既存の考え方をけちょんけちょんに否定する、かなり攻撃的な性格の様だ。打率を必ずしも打者としての優劣を決めるものとは見なさないというのは昨今のセイバーメトリクスにも通じる考え方であるが空井孝一さんは“得塁数”という考え方で、打者自らはもちろん、塁上の走者を多く進めることを最高の価値と考えるのである。


簡単に言うと、走者無しでシングルヒットを打つと得塁数は1。走者一塁でシングルヒットを打って一、二塁にすると得塁数は112になるが、同じ走者一塁でのシングルヒットでも一、三塁になれば得塁数は123になるというもの。本塁打が出れば自らの得塁数4に加えて走者がいればその走者が進んだ塁の数だけ得塁数が加わる。即ち同じツーランホームランでも走者三塁でのツーランなら得塁数は5だが、走者一塁でのツーランなら得塁数は7になる。ある意味、出塁率と長打率の合計であるOPSに似ているのかもしれない。


この考え方をベースに、通常の試合で起こり得る様々なケースに、この場合はこう数えるといった感じで“得塁数”の定義を決めている。ご丁寧なことに失敗した時の“失塁数”まで定義している。空井孝一さんはこの“得塁数”という指標に相当な自信を持っていて、

“いかがでしたか?得塁数は単に新しい評価基準というだけでなく、既成のルールまで変えてしまうのです。読者のみなさんはこの得塁数を学べば学ぶほどその合理性を思い知らされることでしょう。私はこの得塁数という評価基準を二二歳のときに考案しました。一億総野球評論家といわれるこの異常人気の「野球」に堂々たる矛盾があるのに誰も指摘しない。それを指摘し、かつ解決する具体案を提出できたのだとして当時有頂天になりました。得塁数の論理こそ「誰も気づかなかった誰をも納得せしめる論理」で、そのようなものが他にあるだろうかとも思いました。”

と書いている。終始こんな感じで読んでいて嫌になるが、確かに攻撃面における貢献度の指標としてはなかなかなものではあると思う。ただし一般のファンレベルでは打者の打撃成績は容易に入手できるが、打者の安打で走者がいくつ塁を奪ったかは打点にならないケースでは特にわかりにくい。


この本が出される前のシーズンの打率のランキングと得塁数のランキングを比較できる。試しに引用してみる。対象は昭和58(1983)


1983年セ・リーグ打率TOP10

1位 打率.353 真弓明信 448打数158安打
2位 打率.337 若松勉  413打数139安打
3位 打率.318 田尾安志 506打数161安打
4位 打率.316 山本浩二 462打数146安打
5位 打率.315 谷沢健一 485打数153安打
6位 打率.314 高木豊  465打数146安打
7位 打率.307 篠塚利夫 424打数130安打
8位 打率.30537高橋慶彦 465打数142安打
9位 打率.30532山崎隆造 357打数109安打
10位 打率.3049長崎啓二 364打数111安打

何とも懐かしい名前が並ぶ。これに対して空井孝一さん式の得塁数年間TOP10は、

1983年セ・リーグ年間得塁数TOP10
※ カッコ内は打率順位

1位 総合得塁600  原辰徳(12)
2位 総合得塁5501/6 掛布雅之(15)
3位 総合得塁5435/6 山本浩二(4)
4位 総合得塁5211/6 衣笠祥雄(19)
5位 総合得塁5102/3 レオン(22)
6位 総合得塁4981/12 高橋慶彦(8)
7位 総合得塁4941/2 大島康徳(20)
8位 総合得塁4817/12 田尾安志(3)
9位 総合得塁4755/6 真弓明信(1)
10位 総合得塁4735/6 谷沢健一(5)

分数が出てくるのは、ひとつの進塁を打者と走者で分かち合うケースがあるから。細部にこだわる空井孝一さんらしい。

続いてパ・リーグで見てみよう。

1983年パ・リーグ打率TOP10

1位 打率.332 落合博満 428打数142安打
2位 打率.321 スティーブ 476打数153安打
3位 打率.320 クルーズ 434打数139安打
4位 打率.317 リー   479打数152安打
5位 打率.312 簑田浩二 445打数139安打
6位 打率.306 古屋英夫 487打数149安打
7位 打率.304 ブーマー 450打数137安打
8位 打率.3029 石毛宏典 439打数133安打
9位 打率.3026 島田誠  489打数148安打
10位 打率.302 水上善雄 427打数129安打

1983年パ・リーグ年間得塁数TOP10
※ カッコ内は打率順位

1位 総合得塁5461/6 簑田浩二(5)
2位 総合得塁5282/3 テリー(23)
3位 総合得塁5235/6 福本豊(19)
4位 総合得塁5221/3 山崎裕之(17)
5位 総合得塁5152/3 スティーブ(2)
6位 総合得塁5091/3 石毛宏典(8)
7位 総合得塁509   門田博光(13)
8位 総合得塁5052/3 大石大二郎(18)
9位 総合得塁5021/12 水谷実雄(16)
10位 総合得塁4865/6 落合博満(1)

空井孝一さん風にいえばこの年の最高打者は原辰徳簑田浩二ということになる。原も簑田もこの年の打撃主要タイトルを獲得していないが、原はこの年のMVPで、簑田はいわゆる“トリプル・スリー”をこの年に達成している。打率は単に安打を打つ確率の高さを表すものだが、それが最高の打者を決めるものとの風潮に異を唱える空井孝一さんの思惑通り、打率の順位と得塁数の順位は顔ぶれが異なる。


この本には他に1980年、1981年の同様のランキングが記載されている。
空井孝一さんはこの本を出した後、どうなったのだろうか?自ら考えた“得塁数”に絶対の自信がある様で巻末に反論、批判をあびせてほしいと訴えていて、山口県岩国市の自宅の住所と電話番号を載せている。プロフィールも“広島大学理学部卒”と書いているだけ。謎である。“昭和59920日 発行”とある。昭和59(1984)9月の時点で大学を卒業しているということだから最も若くても1961年生まれで、またはそれ以前ということになるから現在58歳以上ということになる。


22歳の時にこの“得塁数”を発見したという空井孝一さんが、セイバーメトリクスが幅を利かせるこの時代をどう見ているのかが気になる。


どなたか、空井孝一さんを知っていますか!?

 

 

 

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