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2015年10月16日 (金)

ゴールデンイーグルスの新任・与田剛投手コーチが松井裕樹の先発再転向を示唆

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日、ゴールデンイーグルスは来季のコーチングスタッフを発表。今季まで評論家で、投手コーチに就任することが決まった与田剛が今季、クローザーとして大車輪の活躍をした松井裕樹の先発再転向を示唆した。


松井裕は新人だった昨年は主として先発投手として起用されたが、今季は開幕からクローザーに抜擢され、
63試合に登板して3勝233S、防御率0.87、奪三振率は驚異の12.82をマークした。


今季の松井裕のクローザーとしての安定感を考えると、来季も…と考えると思うのだが、与田コーチは先発再転向を示唆。クローザー松井裕を犠牲にしてでも先発投手松井裕の可能性にかけてみたいということだろうか?それほどにポテンシャルの高い投手ということは、素人の敗戦処理。にも容易に想像できる。


ただ…



「高校時代からテレビで見て、すごいピッチャーだと思った。先発をやれる力はある。あとは本人の希望を聞いていきたい」



「秋季キャンプから白紙の状態で見たい。先発、中継ぎを見て、監督と骨組みをキチンと相談していきたい」
(以上どちらも1014日付け日刊スポーツより。与田剛・新投手コーチの談話)


松井裕樹の今季の成績を見てみる。


63試合、3233S、721/3、奪三振103 自責点7、防御率0.87、奪三振率12.82


どれをとっても素晴らしい数字だ。


ただ33セーブといってもパ・リーグの最優秀救援投手ではない。上には上がいる。パ・リーグで優勝したホークスのクローザー、デニス・サファテの成績も見てみよう。


65試合、5141S、642/3、奪三振102 自責点8、防御率1.11、奪三振率14.20


これまた素晴らしい。


単純に考えても、セーブ数の多い少ないは必ずしもクローザー個人の優劣を現すものではない。言うまでもないことだが、チームがリードしていなければクローザーの出番はない。下位に沈むチームの優れたクローザーはいわば宝の持ち腐れ状態になりかねない。だからサファテが松井裕よりセーブ数が多くても、不思議に思うファンは少ないだろう。


だが、この両投手の成績を比較すると、不思議に思えることがある。


ホークスは首位を独走。優勝決定日がパ・リーグで歴代最速日で2位のファイターズには12ゲームの差を付けた。一方のゴールデンイーグルスは終盤にバファローズにも抜かれ、残念ながら二年連続の最下位。ホークスとゴールデンイーグルスの間には33.5ゲーム差があった。


優勝チームと最下位。しかもこれだけの大差。にもかかわらず、本来ならばチームがリードをしている場面限定で登板するクローザーであるサファテと松井裕のまず登板数が2試合しか違わないのだ。そしてイニング数に至っては最下位のチームのクローザーの方が1割多いのだ。クローザーとは、その優劣の違いはあれども、基本的にはチームがリードしている試合の多い方が登板数が多いはずである。単純に考えれば、チームの勝ち数が多くないのに、クローザーの登板数が多いとしたら、そのクローザーが勝ち試合をダメにしているという推測も出来てしまう。だが、松井裕は失敗しないクローザーだった。


それでは何故こういう現象が起きたか?敗戦処理。はゴールデンイーグルスのファンではないので、ゴールデンイーグルスの試合をくまなくチェックしている訳ではないが、松井裕にはビハインドの展開とか、同点での起用が目立つということだ。典型的なのはゴールデンイーグルスが東京ドームで主催したファイターズ戦。楽天グループの福利厚生を兼ねた年に一度の東京開催。リードされている状態で松井裕はマウンドに上がった。ビハインドの試合でイニングまたぎをした試合もあった。これはクローザーの起用法として、如何なものか


昨今のように、信頼されるクローザーが極力、リードした試合の最後1イニング限定で起用されるようになったのは大魔神・佐々木主浩からだと思う。佐々木以前にも優秀なクローザーは何人も存在した(もっとも、その頃はクローザーとは呼ばれなかったが…)。彼らは先発投手が一人で投げ切れないと見ると、ピンチにマウンドに上がり、相手の反撃を断つのが仕事だった。そうなると試合展開により、八回の途中から投げることもあるし、逆に九回の途中からの出番となることもあった。つまり、ピンチの度に、必要に応じて出てくるのが佐々木以前の抑え投手だった。


江夏豊
1979年の日本シリーズ第7戦の「江夏の21球」は有名だが、その21球とは江夏が九回裏に投じた投球数であり、実際の江夏のその試合の投球数は41球だった。日本シリーズ第7戦という、日本一をかけた最終決戦に抑えの切り札江夏は七回裏二死一塁という場面で投入されたのだ。


佐々木を擁した1998年のベイスターズの権藤博監督はこの絶対的守護神の存在をチームでどう活かすかを考えたときに、佐々木を1イニングの登板に限定することが、佐々木を年間で最も多く起用できる使い方だと考え、いかにして八回までにリードを保つかを考えたという。つまり、初めに佐々木ありきですべてが佐々木からの逆算。極論すれば、先発投手ですら、佐々木につなぐまでの最初の継投一番手に当たる。そのくらい佐々木の信頼感は絶対的だったのだが、その後、佐々木以降、佐々木ほどの信頼感、安定感はなくても、クローザーは1イニング限定。クローザーの出番までいかにリードを保ったままで九回までつなげるかというのが、監督の采配の基本となった。


その時代に、大久保博元監督は松井裕をもちろんチームのためにではあるが、必ずしも限定的でない起用法をした。その結果が優勝チームと33.5ゲーム差もありながら、その優勝チームのクローザーの登板数とイニング数の差が均衡するという異常な結果になったと敗戦処理。は見ている。


もっと単純に考えよう。


そもそもクローザーはチームが終盤までリードしている展開で投入される存在だが、チームの勝ち試合すべてに投げるわけではない。最近では非常に少なくなったが、先発投手が完投勝利する試合もあれば、大量リードでクローザーを出すまでもない試合もあろう。ということは、クローザーの登板数は、チームの勝利数より少なくなるはずなのだが、松井裕は今季のゴールデンイーグルスの勝利数
57より多い、63試合に登板している。繰り返しになるが、松井裕が登板して勝てる試合を勝てなかった試合は少ない。松井裕の敗戦は2敗。サファテは65試合に登板しているが、ホークスは90勝。


これがセットアッパーの登板数なら、彼らは同点でも投入されるし、チーム事情により1点あるいは2点以内のビハインドで投入されることもある(その場面のいくつかはクローザーを温存したいがためにセットアッパーにお鉢が回る)からチームの勝利数を登板数が上回っても理解の範疇だが、クローザーでは異常値だと思う。


サファテとばかり比較するのも偏り過ぎかもしれないので、優勝でも最下位でもないチームのクローザーの登板数を見てみよう。


F 増井浩俊 登板数56、チーム勝利数79
M  西野勇次 登板数
54 チーム勝利数73
L  高橋朋己 登板数
62 チーム勝利数69
Bs 佐藤達也 登板数
59 チーム勝利数61

YSバーネット登板数59 チーム勝利数
76
G 澤村拓一 登板数
60 チーム勝利数75
T 呉昇桓  登板数63 チーム勝利数
70
C 中崎翔太 登板数69 チーム勝利数
69
D 福谷浩司 登板数42 チーム勝利数
62
B 山崎康晃 登板数58 チーム勝利数62



終盤にリタイヤしたクローザーや、中盤で失格の烙印を押されたクローザーもいるが、松井裕の登板数がチーム成績に比べて異常値と言えよう。


一体全体、大久保監督は何を考えて松井裕をこんなに多く、敢えて言えば必要以上に多く登板させていたのだろうか?それともこの松井裕の偏重起用も、今季物議をかもした三木谷浩史オーナーの「天の声」だったのだろうか?


与田コーチもドラゴンズでの現役時代、NTT東京から入団した一年目からクローザーに抜擢され、ルーキーイヤーに50試合で4531Sという好成績を残した。ルーキーイヤーの31セーブは今年ベイスターズの山崎康晃に抜かれるまで新人最多記録だった。だが全盛期は短く、三年目に41試合に登板して2523Sという成績を残した他は突出したシーズンがなかった。こういう経験をしている投手出身の指導者は、投手の酷使、負荷の増大に注意を払うものだ。


佐々木の起用法で例に出した権藤監督も現役時代には典型的な「太く短く」型だったようだ。権藤監督は佐々木の能力を最大限に活かすために佐々木を勝ち試合の
1イニング限定にしただけでなく、佐々木につなぐまでの重要な役割を担う中継ぎ投手にも特定の投手に負荷が集中しすぎないように「中継ぎ投手のローテーション制」をうたっていた程だ。他には吉井理人もファイターズのコーチ時代には投手の負荷増大には気を配っていた。与田コーチは現役引退後、フルシーズンのコーチをするのは初めて。どんなタイプのコーチになるかはまだ未知数だが、自分を反面教師に投手の負荷を考えるタイプの指導者になるとしたら、敗戦処理。がここまで書いてきたような異常値とも思える松井裕の今季の登板データを見て、先発に戻そうと考えても不思議はない。


来季どんな起用法になるにせよ、まずはこのオフに心身ともにリフレッシュしてとは誰もが思うだろうが、差し当たって「プレミア12の侍ジャパンメンバーに選出された。左投手は他にドラゴンズの大野雄大だけで、リリーバーでは松井裕だけ。今季、クローザーとして起用された投手では他に山崎康、増井浩俊、澤村拓一がいるので、むしろアンダースローの牧田和久とペアで試合中盤の勝負どころで起用される、ジャイアンツでいえば山口鉄也、ファイターズでいえば宮西尚生のような起用法になるのかもしれない。


故障
が心配だが、今季のバリエーションの豊富な登板、そして「プレミア12」という大舞台での経験と合わせ、松井裕には金では買えない経験という財産を得ることだろう。来季、規則正しい起用法に守られれば、今季以上に松井裕は敗戦処理。の様なファイターズファンを始め、他球団ファンにとって驚異の存在となるだろう。


梨田昌孝
新監督、与田投手コーチの起用法、育成法が注目される。

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