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2010年7月13日 (火)

長島茂雄殺人事件

Dsc_0002 正直、ろくに小説も読まず、芝居も観ない敗戦処理。にとって先日亡くなられた つかこうへい さんの作品で真っ先に思い浮かぶのは「蒲田行進曲」ではなく、この「長島茂雄殺人事件」だ。もう二十年以上も前に読んだ本だが、探したら見つかった。

(写真:「長島茂雄殺人事件」つかこうへい作・角川書店刊)

  

長島茂雄が殺される!!-長島茂雄の周囲で次々と狙撃がなされていく。犯人が狙っているのは長島茂雄だ。果たして誰が、何のために長島茂雄を狙うのか?

作品中の長島は警察から自分が狙われていることを知らされる。当然、警察は長島にとりあえず試合に出ないよう勧める。しかし「動物的カン」の持ち主と言われた長島は打席でバットを構えて集中していれば、スタンドのどこかから自分を狙う男の存在に気付き、なおかつ放たれた銃弾をバットで撃ち返すから心配無用と言い放つのだ。

「僕のスイングなら、ライフルの弾なんか軽く打ち返しますよ。投げた所へ打ち返す、いわゆるひとつのピッチャー返しですね。だからその人、自分の打った弾に当って死んじゃいますよ」

やっぱりバカだった。

「ほんとです。これが僕が若い時だったら、急所をはずして傷を負わせ、逮捕させることもできたと思うんですが、最近、打率も落ちてますし、しかもなにせライフルの弾ですから、いくらこの長島をもってしても、はじきかえすのが精一杯だと思うんですよ」

この部分だけを見ると作者が荒唐無稽にミスターを茶化して遊んでいるように写ってしまうかもしれないが、全篇暖かいミスターワールドで、読むものを引きずり込んでいく。このへんはさすがに つか さんだ。

ホンモノのミスターでもさすがにそこまで天然ぶりを発揮しないだろうが、この作品の中の長島は つか さんの手によって長島ファン、アンチ派、そのどちらもが持つ「長島茂雄」のイメージを巧く利用して、いかにもさもありなんという言動をしている。もちろんミスター本人だけでなく、チームメート、ライバル選手ら、ほとんど実名で出てくるミスターを取り巻く面々も特徴を捉えて描写されている。「長島を一番愛している人間が、長島を殺す権利がある」-作中に出てくるこのキーワードを常に頭の片隅にキープしつつ読み進めると、最後の最後に意外な狙撃者にたどり着く。

試しにアマゾンで検索してみたら、中古で手に入れられそうなので興味のある方は如何か。読んだ記憶のある方は、一応これから読む方のためにネタバレは御法度ですぞ。

余談だが、この「長島茂雄殺人事件」が舞台で公演されるという企画があった。かなりのところまで準備が進められていたと記憶しているが事前に中止となった。オウム真理教によると言われる極悪な事件が起きた後だったか、とにかく物騒な世相下だったため、公演を自重すべしと言う判断になったように記憶している。当時としては妥当な判断だったのだろうが、見たかったような…。

 

 

最後になりましたが つかこうへい さんのご冥福を心よりお祈りいたします。 

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