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2009年7月11日 (土)

神戸地検がJR福知山線脱線事故でJR西日本の社長を起訴-で思い出したこと、感じたこと。

敗戦処理。が東京ドームで坂本勇人のサヨナラ本塁打に歓喜していた8日、四年前のJR西日本・福知山線の大惨事にあるひとつの区切りが起きた。神戸地検が8日、JR西日本の山崎正夫社長を業務上過失致死傷罪で在宅起訴した。

事件から遡ること九年前の1996年、現場が急カーブに付け替えられた時の安全対策の責任者であったのが今回起訴された、当時の常務取締役鉄道本部長であった山崎現社長だったのだ。

今も当時も東京在住の敗戦処理。にとっても衝撃的大事件。

久々にこの大惨事のニュースに接し、敗戦処理。が当時考えたことを思い出した。

 

今回の神戸地検の起訴理由にもあるように、当時から事件報道で取り沙汰されていたのがJR西日本の安全に関する危機管理の意識の低さ。実際、事件の起きた急カーブの場所の危険性を認識出来たのに、ATSと言われる自動列車停止装置の設置をしなかったことが問題視された。設置すべきものを設置しなかった理由は経費の増大を懸念したからだそうだ。

今さらではあるが、人の命を預かっているという自覚の薄い、言語道断な経営判断には憤りを禁じ得ない。

で、当時、野球に関連して何を思ったかというと…、

事件の起きた2005年4月というのは、日本のプロ野球界にとっては前年の球界再編騒動の紆余曲折を経て新しいシーズンに突入した矢先の時期であった。

前年、即ち2004年の球界再編騒動とは当時の大阪近鉄バファローズが慢性的な球団の赤字体質から脱却出来ず、親会社の近畿日本鉄道がグループ自体の業績悪化も手伝って球団を手放す方向で動き出し、同じパ・リーグのオリックス・ブルーウェーブとの合併を発表したことに始まる再編騒動だ。

細かな経緯はここでは触れないが、当時の報道によると、旧バファローズ球団は毎年のように年間で30億円前後の赤字を出していたという。それでも親会社身売りの多いパ・リーグの中で唯一、身売りが無く続いてきたのは親会社が旧国鉄を母体とするJRを除けば日本最大規模を誇る鉄道会社、近畿日本鉄道が親会社として支え続けてきたからだ。

余談だが日本にプロ野球が誕生した初期には、「プロ野球の父」と呼ばれた正力松太郎氏の方針としてプロ野球チームが過度に親会社企業の宣伝に利用されるのを避けるため、公共性の高い業種に球団参入を絞っていた。その業種とは新聞、鉄道、映画であった。その後映画産業はテレビの普及によって公共性はともかく経営基盤が弱くなり球界から順次撤退していったが新聞、鉄道会社による球団経営は長く続き、新たな業種の参入も相次いだ。

現在発売中の、ほぼ一冊近くジャイアンツ特集で埋め尽くされている「BRUTUS」7月15日号(マガジンハウス刊)に掲載されているジャイアンツの渡邉恒雄会長へのインタビューに興味深い発言がある。

ほかの球団は赤字だ赤字だと文句ばかり言っているけれども、巨人も昭和33(1958)年からやっと黒字が常態化して、今でも黒字だと言ったら、久万さんが怒ってね、「あんたのところは二十何年赤字が続いたというけど、おれのところは60年赤字が続いた。やっと、この3、4年黒字になったんだ。阪神の方が苦労しているんだ、巨人より」と。

久万さんとは球界再編騒動の当時のタイガースの久万俊二郎オーナーだが、タイガース球団ですら長く赤字に苦しんだのだから旧バファローズの状態は推して知るべしだろう。

個人的には正力松太郎氏が掲げた、プロ野球チームの経営を公共性の高い業種に限定するという考え方には共鳴出来るが、時代の変化とともにそうも言っていられないのも事実であり、その後食品、流通、サービス業などの業種が球団経営をするようになったことを否定する気もない。ただ、JR西日本の事件が起きて思ったことは非常に公共性の高い、鉄道事業が球団経営に携わるのは悪いことではないが、その球団の赤字を補填するために毎年30億円もの金額をグループの利益の中から捻出するのが常態化しているのであれば、本当にその30億円の使い道が妥当なのかということだ。

所詮は球団経営は親会社のイメージアップ戦力の一環であるという考え方がある。公共性の高い企業は利益の社会還元の一環として、広く国民に親しまれるプロ野球というスポーツをサポートする意味で球団経営に参加してもらいたいし、企業グループのイメージアップや知名度のアップのために球団を経営する企業には同じく利益の社会還元という考え方も持って欲しいとともに、そのイメージアップ、知名度アップによる利益を球団経営に還元して欲しいのだ。

五年前の事件はあくまでJR西日本という企業において起きた事件で、近畿日本鉄道とは何の関係もない事件だが、同じ鉄道事業として、慢性的に赤字を続ける球団を維持することに躍起になることより、新たに球団経営を引き継いでくれるパートナーがあるのであれば、引き継いだ方が良かったと思ったのだ。もちろん、旧オリックス・ブルーウェーブとの合併という形がベストな選択だったとは思っていない。

近畿日本鉄道は球団の赤字補填に回す30億円で、他にもっとすべきことがあるだろうと言うことだ。

そして今年、また「年間赤字30億円」というフレーズが出てきたのである。

マリーンズ球団がまだシーズンが始まる前に、今シーズン限りで契約が切れるボビー・バレンタイン監督とシーズン後に契約を更新しないことを発表した。そしてそれに関連する報道で、マリーンズ球団の年間の赤字が約30億円に達する現状を挙げ、優勝監督として、またファンに愛され支持されるバレンタイン監督であっても、本人の年俸および関連するスタッフの人件費がバカにならないので契約切れを機に人心一新するという趣旨のようだ。

この件に関しては、仮に球団として赤字減らしのために人心一新が必要だと判断したとしても、それをシーズンが始まる前にファンやマスコミに公表することが大いに疑問なのであるが、大なたを振るわなければならないという球団の危機感だけは伝わってくる。それにその後の報道で如実になってきた、謎の女性球団幹部などの存在がファンの困惑を増大させているのである。

ことが表面化してから、熱心なマリーンズファン、バレンタイン監督を支持するファンがすぐに反応。千葉マリンスタジアムのライトスタンドで球団の姿勢に抗議する横断幕を掲げるファンの姿が各マスコミを通じて報道された。

マリーンズファンの怒りの気持ちはおおむね理解出来るが、横断幕の中にひとつだけ違和感をおぼえたものがあった。

「改革なんてイラネー」

球団運営の実務経験に乏しい、新参者の女性幹部による的確かどうか疑わしい数々の「改革」が既に現場を混乱させているとの報道もある。マリーンズファンの「行動」はそうした報道をも参考にしていると思うが、本当に「年間赤字30億円」という状況が続いているのなら、何らかの「改革」が必要なのは明らかだ。親会社のロッテが、近畿日本鉄道と同じように30億円の意味を考え始めたらどうなるのか?

鉄道事業が乗客の命を一時的に預かっているのと同様に、食品会社も消費者の命に影響を及ぼす関連性が少なくない業種である。そして昨今、「食の安全」に関して意識の低い企業が起こした不祥事が社会問題になっている事例が少なくない。日本と韓国を股にかけてグループ展開する大企業ロッテグループにとって、年間30億円なんてはした金かもしれない。しかし、仮にそうだとしても、球団は親会社のバックアップに甘えてばかりではいられないのである。

あの球界再編騒動から丸四年が過ぎた。球界として身の丈経営の重要さが叫ばれ、各球団が四苦八苦しながら球団運営を続けているのは想像に難くないが、いまだに「年間赤字30億円」という状態が続いている球団があるとは正直、驚いた。

マリーンズがマリーンズであり続けるには「改革」が必要であることは間違いないと思う。その「改革」の一環として費用のかかりすぎる功労者監督とて例外でないという考え方(があったとして)も個人的には理解出来る。ただ解せないのはそれをシーズンが始まる前に公表する必要があるのか?ということ。

2004年の悲劇の再現は一野球ファンとしてこりごりだ。

そうならないためにも、マリーンズ球団には大所高所に立った経営判断をお願いしたい。斬るべき対象は費用のかかりすぎる監督なのか、費用のかかりすぎる監督に責任を押しつけようとする一部のフロントなのか。赤字を減らす有効な策は他にないのか?

熱心なマリーンズファンはマリサポとも呼ばれる。

サポーターであるならば、愛するマリーンズが存続の危機にあるという自覚の元、特定の女性幹部の言動のみに目を光らせるのではなく、球団がどうあるべきか、よく考えて行動を起こして欲しい。横のつながりがあるのなら、旧バファローズのファンから意見を聞くのも良いだろう。

そしてもちろん、マリーンズ以外の球団のファンにとっても他人事で済む問題ではない。プロ野球チームの運営を支えているのは親会社企業である。「百年に一度の不況」と言われている昨今、球団の赤字をいつまでも面倒を見てくれるとは限らないからだ。

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