フォト
無料ブログはココログ

« ジャイアンツの先発ローテ、一軍枠を占う…? | トップページ | 喜んでいいのか…?侍ジャパン四番打者・稲葉篤紀 »

2009年2月14日 (土)

社会人野球の危機、プロ野球の危機

社会人野球、日産自動車の野球部が今年限りで休部するというニュースには「ついに、来るところまで来たか…」という印象を受けた。かつて日産自動車の業績が低迷し、コスト・カッターとして名高いカルロス・ゴーン氏が建て直しに大なたを振るった際にも野球部とサッカーの横浜F・マリノスにはあまり手をつけなかったが、昨今の世界的に未曾有の経済危機に「ついに…」という印象だ。

 

関連する報道の中には社会人野球の大会数の減少まで匂わせるものがあり、一チームの問題にとどまらない感じを受ける。

 

そして企業の支援を受けて成り立っているという点では日本のプロ野球界も似たようなもの。だいじょうぶなのでしょうか?

 

 

 

日産自動車野球部に限らず、社会人野球のチームというのは基本的には企業のクラブ活動。企業の宣伝活動や、社員の意識高揚を目指しているものがほとんどだ。企業の業績が悪化すれば、それこそ昨今のいわゆる“派遣切り”に象徴される非正規雇用の従業員を削減したり、本業と直接関係しない部門を見直す方向性になる。今回の日産自動車の件はレアケースではない。

社会人野球に加盟しているチーム数は1963年の237チームをピークに、現在(2009年2月2日現在)85チームにまで減少している。

チーム数という規模の縮小は大会の実施、運営方法に見直しを迫ることとなる。夏の都市対抗野球と並ぶ二大大会と称される秋の日本選手権のテコ入れが現実味を帯びてきている。たしかに都市対抗野球に比べると知名度が低い大会と言えよう。都市対抗が「都市」対抗という名の通り、都市を代表するチームの闘いという点で、同都市の他チームからの補強選手の活用があるのに対し、日本選手権は文字通りチーム対抗の「日本」選手権。時期的にプロ野球のドラフト会議に近いこともあって、専門家の間では注目度が高いのだが、何故か一般的な浸透度では都市対抗より明らかに低い。

 

2月11日付日刊スポーツによると、昨年を例に取れば、都市対抗の有料入場者数が46万人(31試合=一試合平均14,839)いたのに対し、日本選手権は12万人(31試合=一試合平均3,870)と差は歴然。

 

実は出場各チームは都市対抗では4,000枚、日本選手権では2,000枚のチケットを購入することになっていて、特に日本選手権出場チームにはその負担も馬鹿にならないようで出場するチーム、企業側からも見直しが迫られているという。都市対抗と日本選手権の統合や、日本選手権の一回戦を地域別対戦とし、各地で行って二回戦から大阪ドームで行うなどの案も出ているようだ。

いずれにせよ、野球界の裾野が狭まるという点で野球ファンにとって見過ごせないニュースであることは間違いない。プロ野球だけが関心の対象でアマチュア野球にはさほど関心がないというファンも少なくないだろうが、プロ野球への影響が決して少なくないことくらいはわかっていただきたいものだ。

そして日本のプロ野球界も企業に支えられているという点では大同小異と言えよう。

プロ野球チームの親会社は「企業」である。最近でこそチーム名に地元地域名を加え、地域密着を明確にしている球団が大半だが、実際に金銭的に支えているのは企業である。野球というスポーツ文化を、大企業として課されている利益の社会還元の一環としてプロ野球チームを運営しているといえば聞こえが良いが、実際には企業イメージや販促活動の一環としてプロ野球チームを傘下におさめているのが実態だろう。

現在、ジャイアンツやタイガースなどごく一部の球団のみが単体で利益を出しているが、大方の球団は年間で赤字を出しており、その額は親会社が補填している形になっている。親会社が球団の赤字を埋めるために捻出する額が税制上有利に扱えるため、親会社は球団が出す年間で億単位の赤字を埋めることがさほど苦にならない。

しかし、親会社も本業の業績が厳しくなると、そこまで手が回らなくなってくる。

最近では2004年の球界再編騒動で二つの企業がプロ野球チームを手放した。近畿日本鉄道とダイエーである。

球界再編騒動のきっかけとなった大阪近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併騒動はバファローズの親会社、近畿日本鉄道が球団を持ちこたえられなくなったからなのだが、当時の報道で年間約30億円の赤字球団と伝えられた。中にはバファローズ球団は50年を超える歴史の中で一度も単年で黒字を出したことがないという報道もあった。毎年のように数十億という単位で赤字を出し続ける球団がパ・リーグでは唯一、身売りなしで続いてきたのは親会社が(旧JRグループを別にすれば)日本で最大規模の鉄道会社が親会社だったからに他ならない。その近畿日本鉄道が21世紀に入る前後から顕著に業績が悪化し、鉄道本体に直接関わりの薄い事業を順次整理して行かざるを得なくなっていた。

そもそも日本でプロ野球がスタートした時代には立ち上げに尽力した「日本プロ野球の父」といわれた故・正力松太郎氏の方針により、球団が過度に企業宣伝に利用されることを避けるために球団を経営する企業を公共性の高い業種に限定した。それが新聞、鉄道、映画産業だった。

個人的な感想を言わせてもらうと、球界再編騒動の翌年にJR福知山線の大惨事が起きたのだが、その時にあらためて鉄道会社の公共性というものに頭をめぐらせた。鉄道会社は利益を上げ続けることと同等、あるいはそれ以上に「安全」というものに対し、最大限の努力、設備投資を続けるべきであるということ。この大惨事はJRで起きたことだが、同じ鉄道事業を営む近畿日本鉄道においても、毎年毎年、数十億円の赤字を出し続ける球団のために回す費用をもっと別の使い途があるだろうということだ。つまり「プロ野球チームの親会社」という顔以前にもっと優先順位の高いことがあるだろうということを感じたのだ。

その近畿日本鉄道以上に、天文学的な有利子負債を抱えていたのが周知の事実だったのがダイエー。球界再編騒動のさなかのオーナー会議に、何と25年ぶりに出席して話題となったライオンズの当時の堤義明オーナーが単独で記者会見を開いて「パ・リーグではもう一つの合併が進行中である」と表明した時、それが福岡ダイエーホークスを絡めたものであるということを多くのファンはすぐに浮かんだだろう。流通業界日本一にまで登り詰めたダイエーの歯車が狂いだしたのは1995年の阪神、淡路大震災による店舗の被害からといわれているが、本拠地福岡ドームの建設費が圧迫していたという衝撃の事実も明らかになった。

ダイエーが倒産すると、ダイエーの社員だけでなく、取引業者など様々な関連業種に波及する影響があまりにも大きいので簡単に潰す訳にも行かず、産業再生機構入りも取り沙汰されたが、そうなると当然球団を手放さざるを得ず、身売りか合併の方向で水面下で話が進んでいると言っても不思議でない状況であった。結局、当時の高木邦夫社長が産業再生機構入りにぎりぎりまで抵抗し、ソフトバンクへの身売りという形に落ち着いた。

2004年の球界再編騒動においては楽天、ソフトバンクという新興のIT企業が新たに加わった形になったが、もしも今後、球団経営を手放さざるを得ない親会社が出てきたら、それに代わる企業が出てくるだろうか?

この状況下でプロ野球界として考えなければならないことは、球団が企業体としてお荷物にならないことであろう。例示したような親会社自体の経営危機に対してはどうすることも出来ないが、少なくとも球団自体が親会社の経営の足を引っ張る状況を避ける努力をするべきだ。既にキャンプの紅白戦などで物議を醸している「15秒ルール」にしても、その適否はともかく試合時間短縮への危機感が元になっていることは間違いあるまい。

また、「野球」というスポーツ自体の人気、話題性を高めるためにはプロ野球の試合興行だけに力を入れるのではなく、五輪やWBCのような国際大会にチームの垣根を越えて日本代表チームを結成して力を入れているのも対策の一環だろう。その意味で社会人野球の名門チームの活動休止や開催大会の縮小はプロ野球界にとっても死活問題なのである。

多くのプロ野球ファンが悲観したあの球界再編騒動の第二幕がいつ起きてもおかしくない。日産自動車野球部の休部というニュースから、これだけの不安を敗戦処理。は抱いてしまうのである。

一連の報道の中で、「企業スポーツの限界…」という趣旨のものを見かけた。企業に過度に依存する日本スポーツ界のあり方への批判もあろうが、日本のプロ野球をこれまで支えてくれたのはあくまで「企業」が第一義であろう。それを否定しないで欲しいし、これからも企業文化と共に歩むスポーツとして永く続いて欲しいものなのだが…。

« ジャイアンツの先発ローテ、一軍枠を占う…? | トップページ | 喜んでいいのか…?侍ジャパン四番打者・稲葉篤紀 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 社会人野球の危機、プロ野球の危機:

« ジャイアンツの先発ローテ、一軍枠を占う…? | トップページ | 喜んでいいのか…?侍ジャパン四番打者・稲葉篤紀 »

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

最近のトラックバック